社会保険労務士事務所 リバシティーオフィス・市川孝友が答える労務相談Q&A
「年俸制導入について」
Q.年俸制を導入したいと考えていますが、どのような点に気を付けたらよいでしょうか、アドバイスをお願いします。
A.年俸制の対象とすることに適しているか否か、就業規則の変更について、年俸額の決定方法などに関していくつかの留意点があります。
〔具体的には〕
  賃金の決定、計算及び支払いの方法は就業規則の絶対的記載事項であり、年俸制の導入によって就業規則の変更手続きが必要になってきます。
労働協約で賃金決定について定めている場合には、労働協約の改定も必要になります。
その上で、年俸制導入の留意点についてですが、次のようなものがあげられます。

①年俸制の対象者として適しているのは、一部の上級管理職や専門職種に従事する労働者です。
具体的には、その者の仕事上の成果が、能力や努力により左右できるような職種や職務上の地位にあって、業績に対する責任を直接負うべき権限や裁量を与えられている労働者と考えられます。

②年俸制の決定基準については、あらかじめ規定されていることが必要であるとともに、その基準は客観的で合理的かつ明確なものでなければなりません。
なお、定められた基準により年俸額の減額を行う場合には、個別の労働者の同意を取った方が良いでしょう。

③実際に年俸額を決定するにあたっては、業績評価や決定にあたる者がその基準や方法を正しく理解していなければなりません。
そのため2人以上の者による評価を行うことが望ましいでしょう。

④年俸額を決定した根拠を充分に説明する仕組みを作ることが大切です。
その際に、労働者が自己の評価について異議申立ができるようにしておくべきでしょう。

⑤年俸制は労働基準法の時間外労働や休日労働による割増賃金の支払いを免れるものではなく、労働時間管理が必要です。